中高年の恋愛ってタブーなこと?
『チャーリーとチョコレート工場』の作者として世界的に有名なイギリスの児童文学作家、ロアルド・ダールの作品『ESIO TROT』(日本語訳『ことっとスタート』または『恋のまじない、ヨンサメカ』)。
驚くことに、この本、子ども向けながら、シルバー世代を主人公にした恋愛ロマンス物語です。
ソフトで軽快なタッチ、そしてクスッと笑えるイギリス流のユーモアに、あっという間に引き込まれてしまいました。
ところが読み進めるうちに、この可愛らしい物語は、私に「大人の恋愛」はもちろんのこと、子どもへの性教育、そして異文化への理解といった、様々な問いを投げかけてきたのです。
この物語のあらすじ
退職後、花と緑に囲まれた穏やかな日々を送る主人公のミスター・ホッピー。
彼のささやかな楽しみは、丹精込めて育てた花々を眺めることと、もう一つ、下の階に住む未亡人のミセス・シルバーの存在でした。
一途に恋心を抱くホッピーさんは、内気で奥手で、なかなかお茶に誘う勇気が出ません。毎日のように顔を合わせるのに、ただ「おはようございます」と挨拶をするのが精一杯。もどかしい日々が過ぎていきました。
そんなある日、ホッピーさんの頭に、鮮やかなアイデアがひらめきます。それは、シルバー夫人の愛するカメたちを利用した、大胆な作戦だったのです!
シャイな彼が起こす奇想天外な行動の一つ一つに、読者はクスクス笑いながらも、きっと心の中で「頑張れ!」と応援してしまうはず。
物語の最後は…
ロアルド・ダール
『チャーリーとチョコレート工場』で有名な児童文学作家ロアルド・ダールの『ESIO TROT』日本語では、『恋のまじない、ヨンサメカ』または『ことっとスタート』として出版されています。映画版は『素敵なウソの恋まじない』。
大人もはまるユーモアたっぷりの児童書作家です。
読んでみた感想
突飛な展開と、どこか憎めない登場人物たちのやり取りに、気がつけば夢中になっていました。
大人が肩の力を抜いて、クスッと笑いながら読める、そんな魅力的な一冊だったのですが、まさかこんなにも考えさせられる読書体験になるとは思ってもいませんでした。
「いい年してみっともない」
この本、ロアルド・ダールコレクション16冊入りの中の1冊に入っていたのです。
Road Dahl Collection 16 Books Box Set
小学生の子どもがいるママ・パパなどの保護者や教育関係者を想定して作られたセットだと思うのですが、その中の1冊に入っていたのです。
ちなみに日本語では12冊セットのみが販売されていますが、その中には入っていませんでした。
16冊セットが販売されていたとしても、この本が選ばれているかどうか…
実際に、読書レビューを見てみると、作品が好きかどうかは別として、「大人向けの本」とか、「子どもにすすめるのをやめた」など、子どもには読ませたくない本といったコメントがいくつも見受けられました。
わたし個人の感想としては、特に「隠したい」大人の部分は描かれていない、子どもも安心して読める本だと感じました。主人公を子どもに置き換えても、なんの違和感もないと感じます。
この本の内容云々よりも、根っこに「恋愛ははしたない」(子どもに教えたくない)という価値観が横たわっているのかな?
学生のうちは「恋愛禁止」、社会人になれば「社内恋愛禁止」、親になれば「親は親らしく」(男と女ではなく)、年を取れば「いい年して(恋愛して)みっともない」など…
出版されているイギリスと比べたら、現在の日本社会は何歳であっても、「恋愛」は恥であるとする社会通念が強いのかなと発見させてくれた本でした。
まとめ
ソフトな恋愛を学ぶきっかけに◎
年齢に関わらず、人を想う気持ちは普遍的。
大人がタブー視し、伏せてしまうと、子どもは恋する気持ちをどう表現していいのか、どんな振る舞いや接し方をしていいのか、お手本なしにはわからない。そして、大人に隠れてコソコソし、その結果、人を傷つけてしまう(かも)…
だからこそ、読み聞かせができて、ココロも成長してくる小学生(8〜12歳)のうちに、“恋愛の入り口”を少しずつソフトに学んでいくのにいい教育本だなと思いました。
ツッコミどころ満載でちょっぴり大人だけど、ユーモラスで可愛いらしいラブ作戦。
気になった方は、ぜひご感想ください!
